たまにはお散歩。
国立国際美術館に行ってきました。
こんなの。
大阪市北区中之島にある、主に現代美術に力を入れた美術館です。
すぐ隣には大阪市立科学館もあり、大阪の小中学生の遠足御用達のエリアです。
また、この周辺は、先ごろ人気を博した連続テレビ小説「あさが来た」の舞台地でもあります。(見てないけど)
でも今回この美術館を訪れた目的は現代美術でも連続テレビ小説でもなく、
これ。
「兵馬俑展」をやってたから。
死ぬまでに一度は見たいと思ってたけど、
根っからの旅行嫌い、飛行機嫌い、一生見ることはできないだろうと思っていた兵馬俑が向こうからやってきてくれるなんて!
こんなに幸運なことはあるまいと、残暑の中お出かけしてきました。
「永遠」を守るための軍団、参上。
ってキャッチコピーもカッコいい!
考えたの誰かしら…。ファンレターを送りたい気持ちです。
前情報なく出かけたので、兵馬俑の展示が意外と少ないのが残念でしたが、他の発掘品などの展示物も十分見応えがありました。
やはり古代中国文明の偉大さは目を見張るものがあります。
「玉」と称される宝飾品の細工の細かさ、
水道管や取水口などの、当時のインフラ設備の充実ぶり、
とても2千年以上前のものとは信じられないものばかり。
中でも感動したのが、「漢字」「金」「瓦」の3つ。
1.漢字
展示されている青銅器なんかには、漢字の刻印がされているものが多く、もちろんほとんど読めないわけですが、「子」とか「大」とか、想像できる文字もちらほら。
「皇帝」という字ははっきりと読み取れました。
数千年も前の文字。それが全く違う国にも受け継がれて、現代の私たちにも読めるということ。
それは本当に感動的で、言葉にならないくらいでした。
2.金
展示されている青銅器や銅の遺物は、どれも太古の昔には光り輝いていたのでしょう。
けれども今では腐食が進み、どれも鈍く黒ずんでいます。
その中で、「金」はやはり異質なほど黄金に輝いているのです。
金の出土品の前を通り過ぎる人みんなが、
「やっぱり金ってすごいな…。」
って一様につぶやいてしまうほど、その輝きは圧倒的でした。
人がいとも簡単に、あっけなく命を落としてしまったであろう太古の時代、「変質せずにいつまでも輝いている」という金の特質は、どれほど人々を魅了したことだろうと、しみじみせずにいられませんでした。
3.瓦
展示ケースの中に瓦を見たとき、
「現代の瓦とそう変わらない!」ということに驚きました。
何事にも「最初」ってあると思うのですが、
瓦を最初に発明した人って偉大だなあ!と改めて思わずにいられませんでした。
湾曲させた瓦を組み合わせることで、雨漏りを防ぐ。一見簡単なようでいて、でも最初に思いついた人って偉大です。
最初に考えた人には、それなりの栄誉が与えられたのかしら、
特許料なんてなかっただろうし、
「おまえ、頭いいな!」
のひとことで終わりにされちゃったりしたのかな。
今からでもタイムマシンに乗って、その人に会って、
両手を握ってぶんぶん振り回し、
「あなたの考えた瓦はこのあと何千年も使われるんですよ!他の国でもね!」
って言いたいっ!(←迷惑。)
と、展示ケースの前でいささか興奮気味に思いました。
地震のせいで瓦の人気は低迷しているようですが、遠くから屋根瓦が光っている風景はやはり日本家屋の美しさを増幅させていると思います。
軽い瓦がもっと普及するといいのにな、とそんなことも考えました。
で、本日のメイン。兵馬俑。
(こちらは写真撮影が許可されたレプリカ。)
本物を見た感想は「大きい!」のひとことにつきます。
こんなにも大きいものをこんなにも大量に、「お墓に埋葬するため」に作るなんて!
「埋め」ちゃうんですよ?!
その情熱は一体どこから?!
と驚愕するほど、俑の一体は大きいのです。
しかもお顔が一人ずつ、全部違う…。モデルがいたということですよね。
こんなお顔の人、実際にいそうじゃないですか。その辺に。
ねね?どっかで見たことあるような、見覚えのあるような人がちらほら…。
リアリティありすぎ…。
お墓の副葬品と言えば、
こんなのとか、
こんなので十分じゃないですか?!・・・だめ?
それにしても、「権力者」というものが考えることの凄まじさには圧倒されます。
自分が死ぬにあたって、こんなにも「ものすごい」こと、「大変な」ことを、「やれ!」と命じるメンタリティーって、
その情熱って、
一体どこから来るのでしょう。
「いや、もういいです…。迷惑だし、お金もかかるし…。おかまいなく…。生きてる人を大切にしてね。ね?」
なーんて考えたりしないのかしら?
もちろん、死後の世界が現世と同じく存在していると信じられていた時代のことですから、あの世でも皇帝として君臨したいと思ったのかもしれませんけれども、
また、当時は皇帝陵の建築そのものが、ある種公共事業の様相を呈していたのかもしれませんが、
そうだとしても、その情熱と業の深さには驚愕の他ありません…。
ものすごく精巧に、写実的に作られた兵馬俑は一体ずつ、表情も違います。
幼さの残る若き立射俑は弓矢が飛んでいくであろう遠くを見つめ、
美丈夫の将軍俑は口元に柔和なほほえみを浮かべ、
歩兵俑は今、戦いに臨むかのように厳しい表情をしています。
この俑の、ひとつずつにモデルがいて、数千年前にはこの世に実際に存在していたのだと思うと気が遠くなるような思いがしました。
史上初めて中国全土を統一した始皇帝ならば、彼らのすべてを文字通り殉死させることも可能だったかもしれないことを思うと、
「人形でいいよ…。」
と言った始皇帝は、案外やさしい人であったのかもしれません。
また、こうして俑となって時を超え、海を越えてきた若者たちは、
始皇帝陵を未完のまま、ついに完成させることができなかった始皇帝よりも、
ある意味幸福なのかもしれないなあと思ったのでした。
陵墓の中では、すべての兵馬俑が東を向いているのだとか。
彼らの目に、東の国の我々はどう見えているのでしょうね。
おまけ。
若き立射俑。
一番のお気に入りです♡