うれしい四がつ。再び絵本のこと。

 

先日、本棚を整理していたら、

 

懐かしい絵本が出てきました。

 

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「おひさん、あめさん」

金子みすゞ:著 森川百合香:絵

JULA出版局

 

 

今や、知らない人はいない天才童謡詩人「金子みすゞ」の詩集絵本。

 

15作品が収められています。

 

 

表紙からも推察されるように、とにかく「かわいい」1冊。

 

丁寧に再現された詩の世界に現れる、

 

元気いっぱいな女の子の表情がとてもまぶしい絵本です。

 

 

お気に入りは「四がつ」

 

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「四がつ」

 

あたらしい ごほん、

あたらしい かばんに。

 

あたらしい はっぱ、

あたらしい えだに。

 

あたらしい おひさま、

あたらしい そらに。

 

あたらしい 四がつ、

うれしい 四がつ。

 

 

春は異動の季節。

 

私にも惜しいお別れがありました。

 

四月に入り、新しい担当の方とうまくやっていけるのか、

 

正直、気鬱になることも。

 

 

特にある仕事先では、新しい担当の方が、

 

若くてとてもキレイな女性で、

 

でも、最初の印象が「つんつん」している方だったので、不安も最大級。

 

正直、ずっと気が重いって考えていました。

 

 

でも、先日、初めてお仕事してみたら、

 

 

「マミーさんっ!この書類、一緒に見ていただけますか?

 

字が小さいのっ!

 

 

部屋に飛び込んで来るなり、

 

「とととー」って駆け寄ってきたその人は、

 

「つんつん」の印象とはまったく違っていました。

 

 

「ほらっ!こんなに小さい字がいっぱい!難しくて!!!」

 

 

とっても困った風に訴える彼女に、

 

「まあ、そんなにお若いのに。私の方が老眼に近いはずですよ」

 

って言いましたら、

 

「でもでもっ!こんなに小さい字で!

 

しかも漢字がいっぱい!

 

無理無理、もう無理なんですっ!!!」

 

 

つんつんじゃなくて、とってもかわいい人でした。

 

私はなんだか笑ってしまって、

 

まあ落ち着いてゆっくり一緒に読みましょう、って言いながら、

 

こんなにもかわいらしい人とお仕事ができるなんて、私はなんて幸せなのかしら、

 

それから、最初の印象だけで、何かを決めつけたり思い込んだりすることは、

 

なんて馬鹿げていて、愚かしいことだったのかと、

 

つくづく考えずにはいられませんでした。

 

 

 

過ぎ去っていく三月は、いつも、

 

懐かしく、慕わしい人たちを連れ去ってしまうので、

 

三月のカレンダーはいつだって、

 

他の月よりも幾分、めくりがたく感じます。

 

 

でも四月が訪れる度に、また思い出すのです。

 

どの四月も、

 

新しい出会いと、新しい友人を私にもたらしてくれたことを。

 

 

今年もまた、

 

新たに出会った方たちと、

 

「どうぞよろしくお願いします」

 

と言い合えることの、なんとうれしいことでしょう。

 

 

「あたらしい 四がつ、

 

うれしい 四がつ。」

 

 

そんな風に感じていたときに、

 

本棚から、この絵本がひょっこり顔を出したのは、

 

きっと偶然なんかじゃないと思います。

 

 

 

 

ところで・・・。 

 

金子みすゞの詩はどうしても、彼女の薄幸な人生を連想させますが、

 

この絵本を見ていると、

 

おてんばで夢見がちな少女だったころの彼女は、

 

ごくごく普通に幸せだったのではないかと思えてきます。

 

 

今さら金子みすゞの詩について、語る必要もないと思うのですが、

 

この絵本詩集の秀逸さは、

 

みすゞの人生の「幸うすさ」を、「感じさせない」ところにあります。

 

 

かわいい装丁に、幼い女の子の日々の感慨が組み合わさって、

 

ページの終わりには、自然と、

 

「詩に対する」感動の涙が、じんわり浮かんできます。

 

 

金子みすゞの生涯を「抜きにして」、

 

「作品をのみ」味わわせることに、

 

この絵本はすばらしい成功を収めています。

 

こういうのを、 

 

編集者の勝利って言うのかな。

 

 

いい絵本です。

 

ぜひぜひ、オススメさせてください。