「不機嫌の椅子」夫婦円満への私の秘訣
みなさま、あけましておめでとうございます。
ちょっと遅ればせながら、みなさまに新年のご挨拶を申し上げるとともに、
今年も旧年中に変わらぬご厚情を賜りますよう、お願い申し上げます。
さてさて、先日は我が家の夫の「夫婦円満の秘訣」についてお話ししたつもりが、図らずも夫の「自己紹介」になってしまいましたが、今日は「夫婦円満」のために私が心がけていることについてお話ししたいと思います。
しかしながら私の、と言うには少し語弊があるかもしれません。
というのも、私の「夫婦円満の秘訣」とは、作家田辺聖子氏の作品中の言葉に基づくものだからです。
高校生くらいだったかなあ。
田辺聖子の小説だったか、エッセイだったかを読んでいて、こんな一節に出会ったのです。
「夫婦の間には「不機嫌の椅子」はひとつしかない。どちらかがそこに座ったら、もう片方は座れない。」
まだ結婚なんて想像もできないくらい幼い私でしたけれど、この言葉はどういうわけか胸の奥深くにするりと落ちてきて、忘れられないひとことになりました。
夫との結婚生活が始まってからも、私の頭の中には、いつもこの「不機嫌の椅子」という言葉が居座っていて、時に私を上手に自重させてくれたものでした。
夫婦の間で、どちらかが不機嫌になった場合、それにつられてもう片方も不機嫌になってしまったら、後は夫婦喧嘩が待つばかり。
それがイヤなら、不機嫌の椅子に座りそこねた一方は、相手の気持ちに寄り添って機嫌がよくなるように支え続けるしかありません。
我が家の場合、夫は基本的にいつも機嫌のいい人なので、夫が「不機嫌の椅子」を要することはあまりありません。
でも、お仕事から帰宅してしばらくは、やはり疲れのためでしょうか、いつもちょっと「不機嫌」です。
そんなとき、私は夫に決して逆らいません。
また、空腹が不機嫌を助長する要素になるので、帰宅してすぐに食事がとれるように気をつけています。
「お疲れさま」のねぎらいと、空腹がすぐに解消されるおかげで、帰宅直後はちょっと疲れて不機嫌な様子の夫も、食事が終わるころにはすんなりと「不機嫌の椅子」から離れてくれます。(←つくづく簡単な人です。)
家庭生活を円満に営むのは、本当に大変なことですが、この、
「不機嫌の椅子」とは、ひとつの家庭にひとつしかない。
ということを理解できない人や、「不機嫌の椅子」に座っている相手に対しても攻撃性を緩められない人にとっては、さらに困難さが増すことでしょう。
「不機嫌の椅子」に座っている夫あるいは妻には、逆らわずに軽くいなすことが肝要ですが、留意すべき点は、
「「不機嫌の椅子」を独占・占有しないようにする」ということです。
目に見えない「不機嫌の椅子」に座るのは、基本的には「早い者勝ち」。
でも、1年365日、ずっと夫ないしは妻が、それを連続で独り占めしては、もう片方はたまったものではありません。
どちらかが「不機嫌の椅子」を使ったら、その次は相手に気持ちよくそれを譲る。
できることなら、よほどのことがない限り、夫婦どちらもその椅子を使わずにすむように努力する。
常にこれだけのことを気にとめるようにするだけで、夫婦間の軋轢はかなり軽減されることでしょう。
ただし。
いくら独占がダメだからと言って、「悪しき平等主義」を夫婦の間に持ち込んでも不毛であると悟ることはさらに重要です。
「昨日、あなたが座ってたんだから、今日は私に使う権利がある!」
とか、
「収入は俺の方が多いんだから、俺の方がたくさん使う権利がある!」
とか。
杓子定規かつ行き過ぎた原理原則主義ほど結婚生活に似つかわしくないものはありません。
どちらかの寿命が尽きるその日までの、気が遠くなるほどの長いスパンで見たときに、お互いが納得できる程度の公平性を確保できればそれでよし、という曖昧さをお互いに受け入れることが大切なのではないかと思います。
かくいう私も、出産後は「不機嫌の椅子」を夫よりもずっとたくさん使用した自覚があります。
いつまで続くのかわからない睡眠不足、たった15分の間もひとつの作業に集中できず、絶えず手を止めざるを得ないストレス、世界で最も大切なものをひとりで抱え込む重圧感。おまけに産前産後のホルモンバランスの激変で、とにかくやたら気分の浮き沈みが激しくなって、ロデオのように乱れる自分の感情を抑え込むだけで、疲労困憊していたものでした。
あの頃、夫が私の感情の波を全身で受け止めながら(←要するに当たり散らされてました。今考えてもかわいそう!)、それでも私を支え続けてくれなかったら、どうしてその後、夫に対して感謝の気持ちや敬意を保つことができたでしょうか。
結婚生活には1年ごとの決算はありません。
互いの関係性に近視眼的な貸借関係を持ち込まず、長い目で見て、「お互いさま」と言える関係を緩やかに目指す。
頭のどこかに「不機嫌の椅子」という概念を持ち込んだら、そんな関係性を維持しやすくなりますよ。ほんとにほんと。オススメです。
小学生のころから、田辺聖子氏の小説が大好きだったのですが、私が夫とそれなりに(あくまで「それなりに」だけど。ほほ。)良好な関係を維持できているのは、つくづく氏のおかげだと思っています。
おまけ。
先日のエントリー
この記事にみなさまからいただいたコメントを、夫婦で大喜びで拝見いたしました。
私「そういえば来年戌年やねえ。あなた、もう戌年に変えたら?」
夫「どうやって?!てか今さら?これ以上?もう十分犬っぽいやん!」
大笑い。
私「ほらっ!カッコいいって言うてくれはる人もいてるやん!」
夫「どこがっ?!どのへんがっ?!」
爆笑。
私「許してもらえるなら「お手」や「チンチン」までする人が・・・」
夫「さすがにそれはないわー。対岸へジャンプ!」
私「せっかく共感してくれてはるのに…今、はしご外したよね?」
大爆笑。
ふたりで大笑いしつつ年の瀬を過ごすことができました。
夫が何か余計なことを言うたびに、娘が
「パパ。いらんこと言うたら、ママにまた「はてな」で公表されるんよ?」
と忠告するようにもなりました。
よくよく考えたら、「はてな」が私たち夫婦の、最良の「円満の秘訣」なのかもしれません。