怒らない夫が泣くほど怒った日。(子育ての思い出・2)

みまさま、こんばんは。

 

今日は育児中だったころの、我が家の夫についてお話ししようと思います。

 

当ブログにたびたび登場する我が家の夫。

時々「むか」っとすることもありますが、根はやさしくて善良な人です。(力持ちではありません。)

また、超がつくほどの合理主義者で、神秘主義精神主義が大キライ、

娘の名前を決める際も、

 

「あなたがこんなに痛い思いをしたのだから、あなたが好きな名前をつけていいよ。だけど、画数占いとかはやめて。絶対。」

 

と言い放った人です。

 

「大体な、漢字や占いなんて太古の昔からあるけど、今と昔の漢字は全然違うし、画数も基本的に減ってるやん。一体全体、どの時代の漢字で占うねん。くっだらない。ぺっぺっ。」

 

なんてことを、出産翌日の妻に言ってしまうような人ですから、誤解を受けやすいタイプではあります。愛想も少々足りません。

ただ、常に理性的で、感情的にならない彼の性格には、妻としてはとても助けられています。

およそ「激昂する」ということがない人で、結婚してずいぶん長くなりますが、夫が怒っているところを見たことがほとんどありません。怒鳴られたことも声を荒げられたこともありません。

今日はそんな夫が泣くほど怒ったある日のことを思い出しながらこの記事を書いています。後にも先にも、彼があそこまで怒ったのを見たことはありません。

 

当時、私は娘の離乳にてんてこ舞いの日々。

とにかく母乳なしではいられない子で(←哺乳瓶がキライだったもよう)、

お腹がすいてもおっぱい、

喉が渇いてもおっぱい、

眠くなってもおっぱい、

機嫌が悪いときもおっぱい、

って感じでしたから、離乳食なんてもってのほか、なにを作っても口から出してしまい、ほとほと困り果てていました。

あれこれ食材を試したり、調理方法を変えてみたり、食べている途中で眠くなったりぐずったりしたら歌を歌って、機嫌をとって・・・

平日はもちろん夫は仕事ですから、普段の私は今で言うところの「ワンオペ育児」。(母との同居が始まったのは娘が小学校に上がってからのことでした。)

けれども休日、私が自分の食事をそっちのけで娘の離乳食に奮闘しているのを見た夫は「これは大変」と思ったようで、たまには私がゆっくりと食事をとれるようにしてあげたいと思っていたようです。

 

ここまでが前提。

で、ある日。

 

仕事から帰宅した夫の機嫌がひどく悪くて、ぷんぷん怒っていたので、どうしたのか聞いてみました。

 

夫「会社の先輩とお店で昼食をとっていたら、家族連れがいて。パパ・ママ、3歳くらいの子と赤ちゃん。

でさ、そのパパがなーんにもせえへんねん。ずーっと漫画読んでて。

ママの方はさ、子どもに食べさせて、お茶飲ませて、上の子が「トイレ!」って言ったら、赤ちゃんも連れてその子をトイレに連れて行ってさ。

でもパパの方は知らんふり。ぴくりとも動かへん。ずーっとやで?

上の子をトイレに連れていく間くらい、下の子を見とけばいいやん?

ママの方はさ、自分のごはんを食べるどころじゃなかったと思うで。

せっかく外でごはん食べてるんやん。普段は子どもの世話に追われてるんやろし、せめて外食してる時くらい、ちょっとは手伝ってあげればいいのに。

よっぽど漫画取り上げて、「おまえ、アホちゃうか、おんなじ顔して、自分の子やろー、ちゃんと面倒みたれや!」って言おうかと思ったわ。」

 

私は夫がそんな軽挙に出なかったことにほっとしつつも、飛び上がるほどびっくりしました。よそのお宅の食事風景なんて放っておけばいいことではありませんか。

だいたい、件のパパが平素から子どものお世話をしていないなんて、よそから判断できることではありません。もしかしたら、普段はパパの方が育児をしていて、その日はたまたまママがお世話をする番だったのかもしれないし。

私がそう言いますと、夫は、

 

「いーや!あれは絶対、普段からなんにもやってないね!」

と断言しました。

 

「そんなん、子ども見てたらわかるやん。その子さ、ひたすらママ、ママ言うとったで。なんでもママ。とにかくママ。パパのことなんか、見向きもしない。全然あてにされてなかったわ。普段からなんにもせえへんからやん。」

 

よほどイライラしたのでしょう、夫はめずらしくキツイ声音で言いました。

 

「俺はあんな父親にはなりたくない。てか、ならない。絶対。」

 

言い切った夫を見上げますと、夫の目にはじわじわと涙が浮かんでいました。

 

「ええー、泣く?よそのお宅のことで?」

 

ってちらっと思いましたけれど、普段から「夫が不機嫌なときは決して逆らわない」ことを信条にしていますので、うんうん、そうだねそうだね、と言ってその話を切り上げました。

 

そうしたら、次の日。

夫が知人の経営するレストランの予約を入れて帰宅しました。

「あんな父親にはならない」と言った自分の言葉をちゃんと実行しようと思ったのでしょう。

妻にゆっくり食事をとらせたい、生後8か月の子どもがいるけどかまわないか、と問い合わせ、「スタッフ全員で万全のサポートをしてあげる、どんどんおいで!」という答えをもらったから大丈夫というのです。

 

私はちょっと面くらいましたが、うれしいことだと思いました。

それは確かに夫の思いやりですものね。

育児のすべてを妻にまかせっきりにして、それが当然と思う人もいるのに、私はとても恵まれているなあと。

 

で、娘の離乳食を用意し、ぐずった時のためにおもちゃや絵本を大量に用意して、週末、夫の知人のレストランへとお出かけしました。

 

でもねえ。

今だから言いますけれど、結果として私、あんまり楽しめませんでした。

 

スタッフの人たちはとても親切でやさしくて、お料理はおいしいし、お店はきれいで快適。おまけに娘はちっともぐずらずに、ずっとお利口にしていてくれました。

しかも夫は一生懸命、「理想のパパ」に近づけるように、「俺が抱っこしてるから、あなた食べなよ。」と言ってくれました。

 

それなのに、私ときたら、どうにもそれが居心地悪くて。

 

だってね?

夫にずっと子どもを抱っこさせて、私ががんがん食べてたら、まわりの人は一体どう思うんでしょうね?

「まあ、最近のお母さんはずいぶんいいご身分だこと。」

とか

「どっちがママかわからへんねえ。」

なんて思われるんじゃないかしら。

 

などと想像して、ちーっとも落ち着かないのです。

わかってますよ、それが気にしすぎだということは。

ちゃんとわかってるんですが、それでも周囲の目が気になって仕方ない私は、

「俺が抱っこしてるよ。」と言う夫に、

「いやいや私が。」と返してしまい、だんだんと娘の取り合いみたいになってしまいました。

 

食事が終わるころには私は気を使いすぎてぐったり、ちっともリラックスにはなりませんでした。

 

帰り道。

「あかんわ、私はほんとにあかん。せっかくパパが気をまわしてくれたのに。

こんなときはしっかり甘えた方がいいのに。かわいげがないにもほどがある。」

と反省した私ですが、以来、「疲れてない?外食でもする?」という夫には

「いや、家で食べる方がいいです!」

と即答するようになりました。

 

さすがに最近では、娘と外食する際に、周囲の目を気にする必要はなくなってきましたが、あの日のことを思い出すと、どうしてあんなに気負っていたのだろうとおかしくなります。

夫にしても、初めての子育てで、私と同じようにいろいろと考えることも気負いもあったのだと思います。

 

「あんな父親にはなりたくない」

 

そう言った夫はその後、とてもいい父親であり続けてくれました。

 

たまーに、

「もうっ!パパったら!どうしてママが時々パパに怒り出すのか、よーくわかるわっ!」

って娘に怒られていますが、それでも娘はいつの間にかパパのそばにべったりひっついています。

夫もよく、

「娘も高校生になったら、「パパ、くさ~い」なんて言い出すんだろうなってずっと思ってたけど、全然その気配がない。」

と不思議そうにしています。

 

それはいつだって、自分のことより娘を優先させてきた夫の子育てのおかげなのでしょう。

 

ちなみに。

先日のこと。

娘がこんなことを言いだしました。

 

「甘えたくなったとき、ママが相手だと、機嫌によっては「もう大きいのに!」って、デコぴんされるから、キケンやねん。でもパパだといつでもヨシヨシ~って甘えさせてくれる。だからね、私が猫だとすると、ママは猫の親って感じで、パパは猫の飼い主って感じ!」

 

 

それを聞いていた夫は「はは。うまいこと言う。」って笑ってましたが、私は内心、

 

「猫の飼い主って・・・それって要するに「下僕」ってことやけど。」

 

と思いましたが、本人が幸せそうなので、放っておいてあげました。

幸せの形なんて、人それぞれですものね。ね。

 

おまけ。

前回のエントリーで、夫のケガについてお話ししましたら、たくさんの方からお見舞いのメッセージをいただきました。夫共々、心から感謝申し上げます。

 

夫は元気にしております・・・ギプスをはめた左腕を振り回して、「シャキーン!」とかやってるのを見たときには、

 

「なんかイラっとする。」

 

と言ったのですが、

 

「ええっ?!なんで?」

 

と心底不思議そうにきょとんとされたので、さらに「いらいらっ!」としました。

 

全国の男の子のお母さまひとりひとりの手を取って、

「男の子を育てるのって大変ですね、いつもお疲れさまです!」

と言って回りたい気持ち。

 

頼むからおとなしくして、さっさと治して~。としみじみ思う毎日です。