少子化の行方

 

みなさま、こんばんは。

 

今日の午後、お買い物に出かけた街角で、こんな写真を撮りました。

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ただの空き地。

ご近所の曲がり角に、唐突に空き地ができたのです。

 

実はこの空き地には、ついこの間まで、病院がありました。

個人病院だけど診療科もたくさんあって、入院設備もある、主に外科を得意とする病院が。

 

それが数か月前から取り壊しが始まって、すごーくびっくりしました。

子どもの頃から、ここには病院があるものと思い込んでいたので・・・。

 

私の家族のうち、この病院によくお世話になったのは弟でした。

私と違ってスポーツ大好き、男の子らしく落ち着きもなかった弟は小さい頃から怪我の連続・・・捻挫、脱臼、骨折、アキレス腱断裂・・・治ったと思ったらすぐに次の怪我をして、しょっちゅうこの病院に駆け込んだものでした。

まだ幼い私を家でお留守番させるわけにはいかなかったのでしょう、母は弟の通院に私も同行させましたから、私もよくこの病院に通いました。

 

今でも鮮明に覚えています。

玄関先のスリッパの山、待合室にあふれる人々、薄暗い階段、診察室前で患者の名前を呼ぶ看護婦さんの声、診察室のベッドを仕切るカーテンの色、先生の机の上に並ぶ茶色い瓶の数々。

 

中でも印象的だったのは待合室の光景です。

外科ですから、そこには怪我をした子どもたちがいっぱい。

でも子どもって怪我をしてても「元気」なんですよね・・・。

待ち時間の長さに辟易して、いつの間にか始まる鬼ごっこ、「だるまさんがころんだ」、階段を使って遊ぶ「グリコ」(←知ってる?)・・・もちろん私もやりました。

たとえ包帯ぐるぐる巻き状態でも、ギプスをはめてても、松葉杖をついていようとも、子どもって全然じっとしていない!

 

おまけに診察室からは、子どもたちの泣き声が大音量で響き渡り、それに負けじと張り上げる先生の声、騒ぎすぎる子どもたちを叱る親の怒号や看護婦さんの声・・・まさに阿鼻叫喚の嵐、ほんっとうにうるさい場所でした。

(病院だけでなく、街中どこに行っても昔は今よりずっとうるさかったものです。

もしも街中でお子さんを「うるさい」「迷惑」と言われたら、この記事を印籠のように差し出すといいですよ。少なくとも今現在、中年と言われる年齢の人間は絶対に小さいお子さんに文句を言える立場ではないと思う…自戒を込めて。)

 

結婚後、しばらく別の街で暮らしていた私が、10年ぶりくらいに今の街に帰ってきたころ、久しぶりにこの病院を訪れたことがありました。

その時の驚きは今でも忘れることができません。

 

患者が年寄りしかいない。

 

しかも「静か」なんですよ!どこもかしこも。

 

いや、病院なんだから、静かで当たり前なんですけど、この病院に関していえば、とにかく「大量の子どもたち」と「うるさい」印象しかなくて、「しーん」としている待合室にいる間、ずっと

「見慣れた場所なのにここじゃない感」

「異次元の空間に迷い込んでしまった感」

が拭えませんでした。

 

包帯を変えてもらったり、ギプスをはめてもらっている子どもたちは消え失せて、そこにいるのは腰とか膝に電気を当ててもらっているお年寄りばっかり・・・。

待合室にはテレビが置かれていて、それにもびっくり。

テレビの音声がちゃんと聞き取れるってことですものね・・・昔は考えられませんでした。

 

私は別に少子化を嘆くわけでも、未来に危機感を抱いているわけでもありません。

政治家や経済界のエライ人じゃあるまいし、そういうことを心配しなくてはならない立場ではありませんから。

 

なにより、子どもを持つかどうかという非常にデリケートで個人的な話に、横からあれこれ言われたくないじゃないですか、誰だって。

私もそういうことを若い人に向かってとやかく言うような、お節介でデリカシーのない人間にはなりたくありません。

 

けれども、静かすぎるくらいに静かな待合室にいる間、そしてとうとう建物ごと無くなって、更地になってしまった病院の跡に立ってみると、

「ああ、少子化ってこういうことなんだ。」

という感慨が心の底から湧き上がってきて、その感情の置き場に少し戸惑ってしまいました。それはなかなか「うら寂しい」感情だったのです。

 

国家の存続とか、経済効果とか、そういう大きなことではなくって、ただただもう、単純にシンプルに、

 

「ああ、あんなに賑やかだったのに。」

「うるさかったけど、活気があったなあ。」

 

と、まるでお祭りが終わった後のような、物悲しい気分になっていることを痛感せずにはいられませんでした。

 

更地になったこの土地には、きっと新しいマンションが建つのでしょう。

せめて、その新しいマンションには、小さいお子さんのいる家庭がたくさん入居してくれるといいな、とふと思いました。

 

おまけ。

おそらく、当記事が今年最後の更新になると思います。

今年も細々と私がブログを続けてこられたのは、ひとえにみなさまとの温かい交流があったからこそです。

年の瀬に、あらためてみなさまにお礼申し上げます。

今年一年、本当にありがとうございました。

来年もみなさまにとりまして、すばらしい一年になりますように。

そして来年も今年と変わらぬご高配をいただけますようお願い申し上げます。

 

それではみなさま。

よいお年を。