中学校図書室が意外と使える件について。

みなさま、こんばんは。

以前、中学校の図書室で借りた本についてお話ししました。

 

mamichansan.hatenablog.com

 

で、今も相変わらず、図書ボランティアの身分を利用して、中学校の図書室に出入りしています。

我が物顔で。

図々しく。

 

そのうち注意されるんじゃないだろうかと内心びくびくしてますが、でもめーっちゃ怒られるまでは使い倒してやろうと思っています。

だって区の図書館よりも近いし。

しかも話題書や人気作家の本も網羅してるし。

その上、「こういう本が読みたいなー」と言えば、次の予算で買ってくれたりするし!

ええ、もうやりたい放題でございます。

昨年の暮れには、marcoさんのブログでたびたび取り上げられている「ビブリア古書堂の事件手帖」が気になって・・・

 

garadanikki.hatenablog.com

 

なんとなく食指が動かなくてこれまで未読でしたが、marcoさんがおもしろいとおっしゃるのだから間違いないだろうと、全7巻、一気に借りてきました。

三上延ビブリア古書堂の事件手帖アスキーメディアワークス

 

おもしろかったです。

古書についての広範な知識、物語の中心を占める謎解き、個性的な登場人物・・・

ライトノベルの枠に留まらない楽しみがたくさん詰まったシリーズだと思います。

表紙のデザインが好みではなくて、これまで手に取ることをしませんでしたが、もっと早く読んでおけばよかったなー。

いえ、別に「萌え絵」がキライとかいうのではありません。

でもこのシリーズに関しては、こんな装幀じゃない方がよかったな・・・あくまで個人的な感想ですが。

古書が詰まれた空間の、清逸な感じがしないんだもん。全然しない。

おそらく、このままの表紙デザインでは私はこのシリーズを決して購入しないだろうと思うので、中学校の図書室で借りられてラッキーでした。

 

で、年が明けて、「新しい本が入ったよー」と連絡をもらったので、性懲りもなくまたまた行ってきました。

今回借りてきたラインナップはこんな感じ。

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結果からいうと、大当たりの大ヒット。

どれもめちゃくちゃおもしろくって、家事をするのも着替えるのももどかしいほど没頭しました。

(週末だけで全部読了・・・どれだけ家事の手を抜いたか、よ~くわかります。えへ。)

 

まずは、

ビブリア古書堂の事件手帖」外伝。

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年末に一気に読み終えた「ビブリア古書堂の事件手帖」外伝。

気になる登場人物たちの「その後」を読めるのが外伝の醍醐味ですね。

でも、今回は本編を読んでから外伝を手に取るまでの期間が短すぎて、登場人物との「再会」という感じはあまりしませんでした。

もう少し時間を空けてから読めばよかったかな・・・。

せっかちな性格で損した気分です。

 

それから、

「玻璃の天」(北村薫著:文芸春秋


 

直木賞受賞作「鷺と雪」と同じ「ベッキーさんシリーズ」の第2弾。

私はこのシリーズが大好きで、以前にも読んだことがあるのですが、再度借りてきてしまいました。

ベッキーさんシリーズは「街の灯」「玻璃の天」「鷺と雪」の3作が出ていますが、ほんとはもっと読みたくってたまりません。

昭和初期の世情、上流階級の人々の生活や文化、そして上質な謎解き。

読んでいる間、極上のトリップができること請け合い。

未読の方はぜひ。

 

「赤猫異聞」(浅田次郎著:新潮社)

これは「浅田次郎」。

典型的な「浅田次郎」。

徹頭徹尾、「浅田次郎」。

たとえば「壬生義士伝」を読んで、大泣きした人なんかはめっちゃはまると思います。

一度読みだしたら止まらない・・・おもしろさについては太鼓判です。

日本人の感動のツボをきっちり押してくるんですよね。

講談・浪曲浪花節・・・泣かせる時は思いっきり!

そういう手練手管に関しては浅田次郎という作家は凄みがあります。

ほんとに巧い。

 

おそらく浅田次郎って、「殿(しんがり)」が好きなのでしょうね。

 

時代が変わるその瞬間に、誰もが自己の保身をはかり、ころりと変節してしまう中、たったひとり、自分の責務を全うし、大義を貫き通そうとする人。

金も名誉も命も捨てて、これまで信じてきた何かのために損を承知で殉じようとする人。

浅田次郎はそういう人を書かせると本当に巧い。

この「赤猫異聞」でも、幕府が倒れ、権力の無法地帯となった江戸で、多くの者が私欲や保身に走る中、ひたすら己の道理を全うしようとする侍の生き様が描かれます。

その侍と同じように、まっすぐで清澄な生き方ができる人は少ないでしょう。

だからこそ、浅田次郎が描く「殿」の侍は私たちの心を打つのかもしれません。

 

で。

本筋からは離れますけど・・・

常々、不思議に思ってることがあるのです。

団塊の世代のおじさまたちって、浅田次郎の書く小説、お好きですよね・・・。

それってどういう心境なのでしょう?

 

もっとも苛烈を極めた学生運動のさなか、あれだけ体制に反発を繰り返しておきながら、卒業が近づけばあっさりと髪を切り、なんら疑問を持たずに大企業に就職し、あとはマルクス主義なんてそっちのけ、ひたすらこの国の経済活動の中心を担ってきた団塊の世代

その世代の人々は、浅田次郎の書く主人公が悲劇的な「殿」として散っていくのを一体どう受け止めているのでしょうか?

いや、別に批判しているわけではないですよ?

ただ単純に不思議だなあ、と思うだけです。

私だったら、ちょっと恥ずかしいだろうな、と思って。

「感動して泣いた」なんて、とても言えそうにありません。

変節しない人の強さを羨望しつつ、その要領の悪さにうんざりする・・・そこにいくばくかの己への恥を混在させながら・・・って感じでしょうか。

 

団塊の世代の方々が、浅田次郎の本を薦めているのを見るたびに、内心、「へー」と思うのです。

別に批判も非難もしていません。

ただ「へー。」って思うだけ。それだけです。

 

「夕映え天使」(浅田次郎著:新潮社)

 

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こちらは浅田次郎の短編集。

あくまで個人的な好みの問題ですが、浅田次郎なら短編集を推したい。

 

市井の人々の悲喜こもごも。誰もが抱えている「かなしみ」。

わざわざ口に出して語ったりしない、でも確かにそこに存在している悲哀。

そういうものを掬い上げるのが上手な作家さんなのだろうと思います。

 

この本のタイトルにもなっている「夕映え天使」。

男やもめの所帯に突然現れた女性の死にまつわるお話ですが、浅田次郎には似たような作品が他にもあります。

人生の中でほんの少しすれ違っただけの女性に心揺すぶられ、暮れなずむ冬空に涙する男性の姿。

人間というものの切なさ、やりきれなさに読者の心もすっかり囚われてしまうことでしょう。

 

そして2作目の「切符」。

この作品にもやはり「殿(しんがり)」の存在が色濃く投影されています。

「ヒリッピンにかたっぽのあんよを置いてきちまった」おじいちゃん。

世間は東京オリンピックに浮かれているというのに、その中でただひとり、未だに戦争を続けているようなおじいちゃんの姿は、いとも簡単に変節できてしまう多くの人々とは明確に一線を画し、言葉にならないほど哀しいけれども美しい。

胸をつかれる作品です。

 

また、浅田次郎という作家は、「東京」を書かせると本当にすばらしい。

いや、私は東京になんの縁もゆかりもありませんが、それでも彼が紙上に描き出す東京の美しさは格別です。

たとえば「切符」冒頭部分。

物干しから眺める夕まぐれの景色が好きだった。

恵比寿の町を縁取るように、小高い丘が繞っている。西は渋谷の高台から続く代官山の森で、電車通りを隔てたあたりは防衛庁の広い敷地だった。そこは少し前まで進駐軍が接収しており、兵隊の姿はもうなかったが、町なかの中古家具屋やネオン管のまたたく酒場の窓などには、まだ彼らの残り香が感じられた。

本当にうまいなあ、と嘆息します。

恵比寿も代官山もよく知りませんが、こんなふうに書かれたら私まで、この夕まぐれの景色が好きになってしまいます。

 

6編の短編が収蔵された「夕映え天使」。

「本を読む喜び」をしみじみ感じさせてくれる一冊でした。

超絶オススメ。

ちなみに私が一番好きな浅田次郎の短編集は「霞町物語」(講談社

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絶対いいから、騙されたと思って読んでみて!

 

「フーガはユーガ」(伊坂幸太郎著:実業之日本社

この本を読んだときもやっぱり「伊坂幸太郎っぽい」と思いました。

これまでの彼の著作の傾向から外れない、いかにも「伊坂幸太郎が書きそうな世界」。

なので伊坂幸太郎作品が好きな人は、その期待を裏切られないだろうと思います。

ありえない設定、でも説得力のある描写、畳みかけるような疾走感、きちんと回収される伏線。最後まで時間を忘れて物語に没頭できます。

 

でもなー、って思うのです。

伊坂幸太郎の書く物語にはよく、「真正の悪人」としか呼びようのない、サイコパス的人物が登場するのですが、私はそれが少し苦手です。

ほんとにそんなにひどい悪人っているのかな・・・まあ、いるんでしょうね。

新聞とかニュースを見ていると、驚くほどひどい人間って確かに存在しているのだと確信できますもの。

でも、正直なところ、そういった人に本の中でまで会いたくないなー、とか思ってしまうのです。

100パーセント善である人間が稀であるように、100パーセント悪の人間もまた稀であると、できることなら信じたい。

多くの人間は、善と悪とが混然と、まだらに混じり合っているものなのではないでしょうか。

そしてそのせめぎあいをこそ、一冊の本の中で見たいのです。

なので、こんなにも完全な、隙のない、真っ黒な「悪」を延々と提示されると少々怯んでしまいます。

 

でも、人気なんですよねー、伊坂幸太郎

今、大阪市立図書館でこの本の予約状況を見たら、なんと約500人待ち!

おそらく年単位で待たないと読めないことでしょう。

本当に中学校図書室様様です。

 

で、これらの本を借りて帰ってくる際に、私がリクエストした本がこちら。

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ユヴァル・ノア・ハラル著「サピエンス全史」「ホモ・デウス(←作者の名前、むずかしすぎ!ちっとも覚えられない・・・)

 

去年、「サピエンス全史」を区の図書館で借りて読んだのですが、これがもうほんっとにおもしろくっておもしろくって!

久々にこんなにおもしろい本を読みました。

おそらく中学生は誰も読まないと思うけど・・・私がもう一回読みたい!(←自己中)

 

「もしかしたら中学生にはちょっと難しいかもしれないけど・・・でも買って、買って!入れて入れて~!」

 

って言ったら、

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こういうのも一緒に買ってくれるって!

図書ボランティアやっててよかったー!!!