通天閣は別天地
先日、食事中に母が言いました。
「お母さん、通天閣って登ったことないわー。」
って。
通天閣ね。
確かに大阪のシンボルのうちのひとつなのでしょうけれども、シンボル的存在だからと言って、誰もがそこを訪れるわけではないですよね。
たとえば京都タワーに登ったことがない京都市民もいっぱいいるだろうし、
札幌時計台に行ったことがない札幌市民だっていると思う!(いますよね??)
私自身は大昔に一度登ったことがあるような気がするのですが、あまりにも古い話で、記憶が明瞭ではありません。
それに通天閣界隈は昔、あまり治安がよくなくて、私も酔っ払いに絡まれて以来、「二度と近づくまい」と心に誓って生きてきたので、すっかりご無沙汰していました。
でも、最近では再開発も進んで、治安も劇的によくなったとの噂ですし、娘も「行ってみたい」というので、先日、家族で通天閣に行ってみることにしました。
最寄り駅・大阪市営地下鉄(最近「大阪メトロ」って名称変更されましたが)御堂筋線「動物園前」駅。
壁面にはいろんな動物の意匠がタイル画で施されています。
キリンやゾウさん、トラもいます。
天王寺動物園へお寄りの際は、動物園前駅のタイル画もぜひぜひご覧ください。
でも今日は動物園に行くわけじゃなくって、
「新世界」。
とにかく「ごちゃごちゃ」「がちゃがちゃ」な街。
統一感とか”おしゃれな感じ”とかからは最も遠い街です。
それでも昔に比べればね・・・ずいぶんと「小ぎれいになった」とは感じます。
だけど、こういう「ダジャレ」の押し売りみたいなお店は健在。
ガチャポンばかりを取り扱っているお店のようです。
「しょ~もな~」(←しょうもない=「くだらない」の意)と鼻で笑って通り過ぎるのがオススメ。
新世界といえば、この「づぼらや」の看板が有名かな。
大阪といえば「戎橋」のグリコの看板か、この「づぼらや」。
でも入ったことないなあ。おいしいかどうかは知りません。
派手な看板は「づぼらや」の専売特許というわけではなくて、このあたりの食べ物屋さんの看板はたいてい「ド派手」。
大相撲風とか、
ビリケンさんとか、
えべっさん(恵比寿様)とか、
鶴亀に、
お船まで。
「一体全体、なんの騒ぎだー!?」と言いたいくらい。
見ているだけでお腹いっぱいになっちゃいます。
通天閣も見えてきました。
でもその前に、大きめのお土産屋さんがあったので、ちょっと寄り道。
と言っても、観光客向けの「ベタ」なものしかなくって、例えば、
ひたすら大阪弁推しグッズ。
それしかないのか、「たこ焼き」のオンパレード。
とにかく「吉本」頼み。
しつこいくらいのダジャレグッズ。
うーん、あんまり欲しいのが見つからない。
あ、でも、常に「はてな」のことが頭にある私ですので、
↑
こんなの(短くなった鉛筆用のキャップ)を見ると、セネシオさまのお気に召すかしら、とか、
↑
こういうのを見たらチコ次郎さんが「きゃあきゃあ」言うんだろうな、とか、そんなことばかり考えて店内をひやかしてました。
さてさて。
それではそろそろ肝心の通天閣に登ってみましょうか。
通天閣の真下から上を見上げたところ。
こんな絵が描いてあるんですね。
伊万里の古いお皿みたいでなかなかキレイ。
近くに来てみないとわからないこともありますね。
入場券。これも「ベタ」やなあ。
もちろん入場券は700円で、7百億円ではありません。
私が子どものころは市場なんかに行くと、50円のお釣りを渡すのに、「はい、50万円」なんて言うおじちゃんが必ずいたものですが(←ほんとにいた)、最近はめっきり見かけなくなりました。
「市場」がなくなってスーパーでばかり買い物してますものね。それも当然の時の流れです。
通天閣の中はところどころ撮影禁止の場所があるので、あまり写真がないのですが、とにかく中には「ビリケンさん」がいっぱい。
大阪の街の中で、これほどまでにビリケンさんに会うことってないんですが・・・やはり通天閣にとってビリケンさんはなくてはならないシンボルなのでしょう。
とにかく全力で観光客から小銭を巻き上げるシステム。
足に触るといいことがあるというビリケンさんですが、全体的に触られまくっているのがよくわかる汚れ具合。
で、5階の展望台に上がると、そこは謎の金ぴか空間。
合わせてビリケンさんも、
金ぴか空間に鎮座なさってました。(ビリケンさん、何体あるねん…と思った。「ありがたみ」という観点からは、完全に逆効果、と思うのは私だけ?)
ちなみに、この金ぴか空間のビリケンさんとか、展望台エレベーター前とかでは、「写真撮影」のサービスもあります。
1枚1,100円くらいだったかな。
やたら元気なお兄さんが写真を撮らせようとしてガツガツ迫ってきますから、がんばって「いりません!」と言いましょう。高いテンションと迫力に負けてはいけません。
「せっかく通天閣まで来はったのに、ここで写真を撮らへんなんて、「ターミネーター1」を見て、「ターミネーター2」を見いひんようなもんですよっ!」
なーんて言われると思いますが、その意味不明さにたじろいでいてはいけません。
すかさず「ターミネーター見てへんし。」(←ウソ)と言いましょう。
そしたら「え~。じゃあ、しゃあないかなー。」とあきらめてくれます。
恥ずかしがってもじもじしてたらダメですよ!
通天閣に入る前に、「いらないです!」「いりません!」と発声練習しておくといいかもしれません。
でも、ビリケンさんの前のスタッフには、自分のカメラやスマホのシャッターを押してもらうことはできます(無料)。
すんごいハイテンションでシャッターを押してもらえますから、それはちょっと楽しいかも。
今や、あちらの方が3倍くらいの高さ・・・。大阪の街を一望するにも、ハルカスからの方がいいのかもしれないなあ。
昔、まだ若かったころ、通天閣にやってきたときは、この界隈はもっとずっとうら寂しい場所でした。
なにもかもが古くて、いじましくて、薄暗くて、かつてここが一等地だった過去の出来事が夢であったかのような場所。
それが、今では「大阪らしさ」を求めてやってくる観光客の期待を裏切らないように、「大阪」のエキスを無理矢理ぎゅぎゅうっと詰め込んで、わかりやすい観光の街として生きていく道を選んだように思われます。
「大阪人以外の人にとって」どこよりも大阪らしく、「外から見たイメージ通り」の大阪であるように。
結果として、すれ違う人から聞こえてくるのは外国語ばかりで、どこかよその国に紛れ込んでしまったかのように感じられました。
ここは、大阪でありながら、違う世界の大阪なんだなあ、としみじみしつつ、
「夜ごはん、どうする?このあたりの串カツ屋さんに入ってみる?」と母に聞いたら、
母「こんなやかましいところで食べられへん。梅田で食べよ。」
という返事が返ってきました。
自分が「通天閣に行きたい」って言うたのになー、と思いつつ、地下鉄の駅に急ぎながら、これから先、この「新世界」はどんな風に変わっていくのだろうとちらっと思いました。
この時代に、通天閣の「今」を想像できた人が一体何人いたことでしょう。
時代の移り変わりについていけなくなった時も、それでも黙って新世界に立ち続けた、ちょっと時代遅れでダサくてカッコ悪い通天閣。
でも、そのちょっとカッコ悪いところも含めて、いえ、ちょっとカッコ悪いからこそ、
「大阪人はあんたを見限らへんよ。がんばり~。」
と声をかけたくなりました。
大阪に来られた際は、ハルカスと合わせて通天閣にもぜひ。
うんざりするほど「濃い」大阪に、どっぷり浸かってからお帰りください。