フツーの校長がコスプレしたりするかしら?

1年と少し前、2021年、初夏の頃。

大阪の小学校ではちょっとした騒ぎが巻き起こっていました。

もう誰も覚えていないかも。

でも、当時はほんとに騒ぎになったんです。

 

大阪市立木川南小学校の久保敬校長(当時)が大阪市教育行政への「提言書」を松井大阪市長に提出。

 

今でも「木川南小学校」「久保校長」で検索すれば、当時のニュース記事が山のようにヒットしますから興味のある方はどうぞじっくりと調べてみてください。

時間のない方のために10秒でざっくり説明いたしますと、大阪のとある小学校の校長先生が、

 

「コロナのせいで毎日すんごい大変やのに、思いつきでいらんことばっかりする市長のせいで、学校現場は余計に混乱してるんや。

オンライン授業?入学したばっかりでひらがなも満足に書かれへん1年生にそんなん無理に決まってるやろ。勘弁してくれ。」

 

と思わず言ってしまったら処分されちゃいました、って感じかな。

 

まあでも、こんな私のざっくり感想文も、どうぞ片目をつむってお聞きください。久保校長にたいして、少し「贔屓」をしているかもしれません。なにしろ私はこの「久保校長」の知人のひとりでありますから。

 

私が久保校長の知人であるという証拠写真

クリスマスの時期、サンタのコスプレをしている久保校長先生(当時)。

たまたまこんなシーンに出くわして、びっくり仰天しつつもシャッターを押した自分を褒めたい…もちろん、この頃には久保校長が大阪市長に宛てて提言書を出したり、それがもとで処分されたりするなんて未来は、まったく予想もできませんでした。

 

「知人だから贔屓目があるかもしれません、どうぞ片目をつむってお聞きください」と申し上げましたが、それでも私は強く、ただひたすらに、何度でも申し上げるつもりです。

 

久保校長先生ほどすばらしい先生は見たことがない、と。

 

本当です。

私は教育者でもなんでもなくて、だから久保校長の同僚というわけでもなく、ただの知人程度の存在ですが、久保校長を悪くいう人なんて、ひとりも見たことがないし、聞いたこともありません。

なにより子どもが、子どもたちが、久保校長先生を愛してやまないのです。

はっきりいって、「フツーのおじさん」なんですよ?(←失礼!)

いや、正直なところ、学校にはもっと「おもしろくて」「妙ちくりん」で「個性的な」先生たちがたくさんいらっしゃるものなんです。でも久保校長は本当に「フツー」。

なのに、子どもたちはいつだって久保校長めがけてまっしぐら。

校長先生のまわりでは、少しでも久保校長の気をひこう、話を聞いてもらおうとするこどもたちが押し合いへし合い、団子状態になっていました。

 

大きな声なんて、決して出さない方でした。

子どもたちを怯えさせるようなことも。

いつだって穏やかで、柔和な笑顔で誰かの話を聞いているばかりのような。

 

なので、久保校長先生の提言書を読んだときには、私はとても驚きました。

あの穏やかでやさしい笑顔の下で、あれほどの怒りと焦燥感を抱えておいでだったとは。

私の目は本当に節穴なんだと思いました。

 

提言書が世間の話題になってから。

私の周囲でもみんなが久保校長先生を心配するようになりました。

 

どんな処分が待っているのか、まさか定年退職を目の前に、学校を去るなんてことにならないかしら、いや、それよりも、今現在、針の筵に座っているような心持ちでいらっしゃったらどうしよう……

 

なのである日、私が久保校長に会った時、

 

「はい、マミーさん。」

 

って手ずから、ご自身のことが書かれている新聞記事を手渡されたときは、心の底から思いました。

 

「強い!!!」

 

って。

いやー、私だったらこれだけ世間で騒ぎになったら、とても自分の新聞記事のコピーを他人に手渡したりなんてできません……ほんとに強い。信念に自信のある人は。

 

その後、久保校長先生は大阪市から文書訓告の処分を受けることになりました。

私は教育者でも行政マンでも政治家でもなんでもないので、事の顛末については何も申しますまい。

けれども、これだけ人から、地域から、そして誰より子どもたちから愛され慕われる先生の言うことをまともに聞くどころか、蔑ろにしたことは、これから末永く大阪の汚点となることでしょう。

 

もしも久保校長先生の主張をもう少し深く知りたい方がいらっしゃるなら、下の本がオススメです。

解放出版社「フツーの校長、市長に直訴!」(久保敬著)

 

久保校長先生の自著ですが、市長への提言書に関すること以上に、教師としての来し方や経験についてのページが多くて読み応えがありました。

久保先生に受け持ってもらえた生徒さんは幸せだったろうなあ。

 

ちなみに、上の「サンタクロース」の写真を撮ったのは2020年のクリスマスです。

確か、子どもたちに

「プレゼントは幸せになれる魔法の粉~!キラキラ~~~!」

って言いながら、空っぽの手を子どもたちの頭の上でひらひら振っておいででした。

 

「ああ、〇〇くんの目がつめたい~!」

 

って笑いながら、でも何度も何度も、「幸せの粉~!」を子どもたちの周りに振りまいていらっしゃいました。

 

私はなんだかおかしくておかしくて、でもその「幸せの魔法の粉」を無尽蔵に振りまいてもらえる子どもたちがうらやましくて、たまらなくうらやましくて、そんなことはめったにないのに、

 

「ああ、もう一度子どもの頃に戻れたら」

 

としみじみと心の中で願ったのでした。

 

ところで。

以前弊ブログで紹介した海月文庫さん

現在、こちらの海月文庫さんでは久保校長先生の初個展が開催中です。

久保校長先生の初個展、開催中!10月7日(金)まで!

もしもご近所の方がいらっしゃいましたらぜひ覗いてみてください。

先日、私もお邪魔しました。

 

「あ、マミーさん。」

 

とても久しぶりでしたのに、久保校長先生は私の顔を見て、すぐに私の名前を呼んでくださいました。(実際には名字に「さん」付けですが)

今でも、それがうれしくて、本当にうれしくて、誰彼となく言いふらしたくなるほど、私の自慢なのです。

 

久保先生に名前を覚えてもらって、会えば名前を呼んでもらえるのよ、すごいでしょ、なんてうれしいことかしら、と言っているそばから、もう私の目から涙がこぼれているのです。

 

そんな「フツー」の校長先生っているかしら。

 

私には「奇跡」の校長先生に思えてなりません。