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痣の話し。人は見かけが大切っていうけれど。

 

 

昔お勤めしていた会社に、

 

ある時、とてもかわいい女の子が入社してきました。

 

 

入社からしばらくして、

 

彼女が私の部署に仕事で訪れた時は、

 

ああ、なんてかわいらしい子かしらと、

 

すぐに彼女が大好きになりました。

 

 

誰かと話すときの彼女の笑顔は、

 

文字通り「こぼれる」ようで、

 

私だけでなく、誰もが好きにならずにいられないような、

 

そんな魅力に溢れたものでした。

 

 

彼女の部署には同期入社の男性社員Kがいましたので、

 

退社後、

 

そのKと一緒に食事をとりながら、

 

「あなたのとこの新入社員、かわいいね」

 

と彼女の話になりました。

 

 

K「ああ、うん、痣がちょっとかわいそうなんだけどね」

 

 

・・・痣?痣って?

 

 

K「顔に痣があるやん、あの子」

 

 

混乱しました。

 

いくら必死で思い出しても、彼女の顔に痣があったことなんて、

 

全く思い出せなかったからです。

 

いや、痣なんてなかった、と言う私と、

 

あるよ、大きいのが、という彼と、

 

食事をしながら、長い押し問答になりました。

 

 

で、後日。

 

再度彼女に会いましたら、

 

Kの言う通り、あるんです。痣が。

 

顔の右半分を覆う青い痣が。

 

 

今度こそ私は本当にびっくりして、

 

仕事の話しをしながらも、どうしてこんな思い違いが発生したのかについて、

 

つくづく考えずにはいられませんでした。

 

 

結局、

 

人間の目や脳は、本当にいい加減なもので、

 

なにか、より目を引くもの、

 

心惹かれるものの前では、

 

痣など気にもならないし、

 

 

彼女のあまりにも愛らしく、

 

「感じのいい」笑顔の前では、

 

青い痣など、全く存在感がないのだとしか説明がつきませんでした。

 

 

私の目は、確かに彼女の笑顔を見ていましたが、

 

指摘されなければ、彼女の顔の痣になんて、

 

一生、気づかなかったかもしれません。

 

 

人は見かけが大事といいますが、

 

もしかすると、顔の造形の美醜よりも、

 

「笑顔」の方がもっともっと大切なんじゃないだろうかと、

 

その時強く思ったのでした。

 

 

何をまた綺麗事を。って思われます?

 

そうですね、確かにそうかもしれません。

 

 

でも、実は、私本人にも痣があるんです。

 

顔ではありませんが、

 

夏になって薄着になると

 

どうしてもお洋服で隠せない場所に。

 

 

ボトルからこぼれた、

 

赤ワインのような色の痣で、

 

それはそれは目立つものですから、

 

子どもの頃は毎日のように、

 

「それなに?それなに?」

 

と聞かれ続けたものでした。

 

「生まれつきの痣なの」

 

・・・それは習い性のように、

 

考えずとも、口からついて出る言葉になっていました。

 

 

なので、

 

さっきの新入社員の女の子が登場してしばらく後、

 

社内で先輩女性にいきなり腕を掴まれて、

 

「ねえ、これなに?」

 

と聞かれたときも、とっさに、

 

「あ、生まれつきの痣なんです」

 

と、答えつつ、

 

「あること」に気づいた私は、驚きのあまり、

 

しばらく息もできませんでした。

 

 

ああ、大人になってから、この話をしたのは初めてかもしれない!

 

 って。

 

 

最後にこの痣について聞かれたのは一体、何年前だろう?

 

この痣が消えたわけでもないのに、

 

ずっと私がそれを忘れていられたのは、

 

誰もがもう、「聞かないでいてくれた」からなのだと。

 

 

 

 

後日またKと食事をしながら、

 

私はしみじみと言いました。

 

 

「やっぱり彼女、痣があったね。

でもあれだけかわいい笑顔があるんだし・・・

 周りのみんなももう、大人だし・・・

誰も彼女を傷つけたりしないよね。」

 

 

「みんなも私の痣に気づいてたと思うけど、

なにも言わないじゃない。

あなたもね。

それって、あなたのやさしさよね。ありがとうね。」

 

って。

 

するとKは私の顔からふいっと目をそらして言いました。

 

 

K「それ、見ようによっては、すげー色っぽいから。」

 

 

見る見るうちに私の痣より赤くなっていく彼の耳を見ながら、

 

私は、たぶん、いえ、きっと、

 

これが彼の、私に対する気づかいなんだろうな、と考えていました。

 

「痣なんて気にするな」

 

とかいう、通り一遍のセリフより、

 

それははるかに、

 

私のこころをあたたかく励ましてくれました。

 

 

「それなに?それなに?」

 

子どもならではの残酷さから、

 

人はいつ卒業するのでしょう。

 

 

時々、自分自身を省みます。

 

自分はそんな風に大人になれているのでしょうか。

 

言わなくてもいいことを言わないでいる。

 

そんな優しさをきちんと持ち合わせた大人になれているのでしょうか。

 

私の周りのやさしい人たち。

 

私は彼らの友情にふさわしい人間でしょうか。

 

 

 

人は見かけが大事。

 

そうですね。ほんとにそう思います。

 

でも、

 

同時に思います。

 

 

痣を隠せる笑顔もありますよ。

 

そして、いくらかの瑕疵を忘れさせてくれる、人のやさしさもありますよ。

 

 

まあ、長い間、不美人で通ってきたマミーのことですので、

 

ある種「負け犬の遠吠え」だと思っていただけたら幸いです。

 

 

あ!

 

蛇足ですが、

Kとは同じ年の同期入社で、社内での立ち位置に上下がなく、

配属先の立場の違いから、衝突することの多い関係でしたが、

同期としての友情はありました。

なので「色っぽい」発言も許されるわけでして、

不用意に社内でこんな発言をすると、下手をするとセクハラ、

もっと下手をすると「キモい」認定をされてしまいますので、

男性諸氏、お気をつけくださいね!

・・・とか余計な事を言っちゃうあたり、私の悪い癖です。とほほ。