京極夏彦「えほん遠野物語 かっぱ」

週末になると我が家では、私か夫のどちらかが図書館に行かなくてはなりません。

借りた本を返しに行ったり、予約しておいた本を取りに行ったり。

 

先の週末は、夫が出かけることになりました。

家中に散らばっている本を集めてリュックに詰めながら、彼が言いました。

 

「帰りに買ってきてほしいもの、ある?」

って。

 

水などの重いもの、トイレットペーパーなどのかさばるもの、そういったものは私の負担にならないように、いつも自分が買ってきてくれようとする夫。

こんな時は、やさしい人だなと認めるのにやぶさかではありません(←しぶしぶ)。

 

で、リュックに詰めた本を背負って、自転車で図書館へと出かけた夫が帰宅した気配がしたので、階下に降りていきますと、なぜか夫の姿がない・・・あれ?と思った私は「パパは?」と聞きました。

 

そしたら、子どもが言うのです。

 

「お水は買ったけど、図書館に行くの忘れたからって、お水だけ置いて、もう一回お出かけした。」

 

思いました。

 

認知症かな・・・?」

40代からの介護生活かあ・・・思ってたより長くなりそうな。

 

もちろん、帰宅した夫に問いただしました。「どういうこと?」って。

夫は慌てて否定しました。

 

「ちがうねん!違うねんって!

図書館行って、水買っただけじゃなくて!コンビニとドラッグストアにも寄ってん!

で、ドラッグストア出たところで、「水買わな!」って思って。

でも、水って重いから、家の近くで買おう!思うて、近くのスーパーまで戻ってん。

で、途中でさー、水はリュックの中に入れて持って帰ろう、って考えたら、

「あれ?背中がなんか重いなあ・・・」って思って、あっ!本持ったままや!図書館行くの忘れてた!って思い出してん。

でも家の近くまで戻ってたから、先に水だけ買って持って帰ることにしてん!

・・・用事って3件までしか覚えられへんね。」

 

途中、「背中が重い」のくだりあたりで、大爆笑の私が

認知症の始まりかと思った!」

と言いましたら、

「・・・確かにこの先認知症になったとしても、どっからが認知症の始まりやったんか、その判定が難しそうやな・・・」

と夫がつぶやくので、さらに「うひゃひゃー!」と笑っていましたら、

 

夫「笑ってるけど、ほんとに俺が認知症になったら、お医者さんに怒られるのはあなたなんやで!

なんでこんなになるまでほっといた!

って怒られるんやで!」

 

・・・もしもそんなことになったら、

 

もとからこんなんなんですー!

 

って言うしかないと思うのですが、怒られるのはイヤなので、いっそ先にぼけてしまおうかなって秘かに考えているマミーです。こんばんは。

 

ところで、このところ急に寒くなりましたね。

大阪ではさすがに雪は降りませんが、でもここ数日の朝の冷え込みは、冬がやってきた!と実感させるに十分なものです。

朝はベッドから出るのに勇気がいりますが、今日は「読み聞かせ」のボランティアの日。

いつもより早く出かけなくてはならないので、今朝は久々にドタバタしました。

 

で、遅刻ギリギリに飛び込んだ教室で今日、読んだ絵本はこちら。

 

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 「えほん遠野物語 かっぱ」京極夏彦 著 北原明日香 画 汐文社

岩手県遠野の人・佐々木喜善が故郷で見聞きした怪異の物語を、柳田国男が書きのこした名著『遠野物語』(1910年)。京極夏彦による新たな語りで、初の本格絵本シリーズとしてよみがえる! 他の土地と違って、遠野の河童の顔は赤い... 村の娘が産んだ子は河童だと噂された... 遠野物語の代表的ストーリー「河童」を、人気イラストレーター北原明日香が、美しくゾクゾクする絵物語に仕上げました。(内容紹介より)

 

4年生のクラスで読んだのですが、読んでいる子どもたちの反応は、

 

「しーん。」

 

ただそれだけ・・・。

 

おもしろい絵本ですと、途中で笑い声が上がったり、大阪ですから鋭くつっこまれたり、と教室が盛り上がってにぎやかになるのですが、今日は水の底のように静かになってしまいました。

子どもたちがどう考えているのか、わかっているのかいないのか、確認のしようがないので、こういう絵本は、実は読み手からは人気がありません。

どうせなら、子どもたちの強い反応があったほうが、手ごたえも感じられるというものですから、それも無理のない話しです。

 

でも、私は個人的に、たまにはこんな本も悪くないなあ、と思うのです。

 

少し難解、ちょっと不可思議。

お話しが終わった後で、ノブのないドアの前で少し途方にくれてしまうような、不安なような。

 

そんな物語はきっと一生忘れられない思い出になると思います。

 

今日、「しーん」となって聞いていた子どもたちも、「おもしろくないから」静かだったとは思えません。

真剣に聞きすぎて、ぽかん、と口を開けていた子どもたちが、

「おしまい」

という言葉を聞いたとたん、夢から醒めたように「はっ!」としてこちらの顔を見た瞬間に、

「ああ、とても集中して聞いてくれてたんだな」

と実感しました。

読み聞かせに成功したと感じる瞬間です。

 

よい絵本とは、

読んでいる間、別の世界に連れて行ってくれる本です。

 

物音が遠ざかり、子どもたちはガサゴソしなくなり、ちょっとした出来事、たとえば教室に入ってきた虫、校内放送、風にあおられて飛んでしまう掲示物、そんなことに気づかなくなる・・・よい絵本にはそんな力が秘められています。

(読むのが下手でも、勝手にそうなります。

子どもたちが集中しないとしたら、それは絵本の方が悪いのです。)

 

たぶん、私は今日、ちいさな子どもたちと一緒に遠野への旅に出ていたのでしょう。

そこで赤い顔の河童を見たのでしょう。

 

 「赤」の使い方がとても鮮烈で印象的な絵本です。

 

読み聞かせにぜひ。

小学生くらいのお子さまをお持ちの方にも、ぜひ。

オススメです。